大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和55年(て)553号 決定

ダグラス・スコット・ミッキー

主文

本件は、逃亡犯罪人を引渡すことができる場合に該当する。

理由

ダグラス・スコツト・ミツキーは、昭和五五年九月二九日ころ、アメリカ合衆国カリフオルニア州プレイサー郡において、殺意をもつてエリツク・リー・ハンソン(男性)及びキヤサリン・ブラウント(女性)をそれぞれ殺害した後、日本国内に逃亡した逃亡犯罪人であり、右プレイサー郡オーバーン・コルフアツクス司法地区治安裁判所裁判官から逮捕状の発せられている者であるとして、昭和五五年一〇月一三日、アメリカ合衆国から日本国に対し、日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約(以下、単に条約という。)九条一項に基づいて仮拘禁の請求があり、同月一四日、逃亡犯罪人引渡法(以下、単に法という。)二五条一項による仮拘禁許可状によつて拘禁され、現在、東京拘置所に拘束されている者であるが、同年一一月二一日、アメリカ合衆国から、日本国に対し、条約八条に基づいて同人の引渡しの請求があり、同月二二日、東京高等検察庁検察官から当裁判所に対し、法八条により、右逃亡犯罪人引渡しについての本件審査の請求がなされた。

そこで、アメリカ合衆国の引渡請求書を含む一件記録を調査して検討するに、本件引渡請求が、条約及び法の定める手続に合致することが認められる。また、右一件記録及び当裁判所における審問の結果を検討すると、アメリカ合衆国から引渡しを求められている逃亡犯罪人ダグラス・スコツト・ミツキーは、現在、東京拘置所に拘禁され、かつ、当裁判所の審問期日に出頭したダグラス・スコツト・ミツキーと同一人物であること、同人が、引渡犯罪に係る行為を行つたことを疑うに足りる相当な理由があると認められるところ、右行為が、条約二条一項、同条約付表一項に規定する犯罪であり、これが日本国において行われた場合において、日本国の法令により、殺人罪として死刑又は無期もしくは長期三年以上の懲役に処すべき罪に該当するものであり、右引渡犯罪に係る裁判が日本国の裁判所において行われたとした場合には、日本国の法令によつて刑罰を科し、これを執行することができるものであることが認められる。

その他、本件請求が、条約、法令に規定する引渡しを制限する事由に該当する事由も認められない。

以上のとおり、本件は、逃亡犯罪人を引渡すことができる場合に該当すると認められるので、法一〇条一項三号により主文のとおり決定する。

(裁判官 綿引紳郎 三好清一 石田恒良)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例